「包丁式」なるものを目の当たりに見ることができた。
食生活文化に関する優れた業績のある方に贈られる「食生活文化賞・金賞」を受賞された長島博氏の祝賀会に出席した。長島氏とはあるご縁で最近お近づきをいただいた。
いろんな業界の立派な方々の挨拶や祝辞はさておき、何と言ってもこの「包丁式」なるもの、日本古来の雅楽の演奏が流れる厳粛な雰囲気の中、烏帽子姿の包丁師が現れ、終始厳かに執り行われ、誠に感動的であった。
庖丁式とは庖丁師により執り行われる日本古来より伝わる儀式である。鳥帽子、垂直姿を身にまとい、大まな板の前に座り、食材には直接手を触れず、右手に庖丁・左手に箸を持ち、食材を祝の型、法の型に切り分け、並べる儀式の事を庖丁式と言う。包丁式は、京都御所に継承される食の儀式で、平安中期の藤原道長の時代に宮家より伝わり現在で1200年ほどになるという。
庖丁式には、鯉や鯛、鮒などの魚の外、雁、鴨などに加えて昔は鶴を天皇の御前のみに用いたとのことで、材料や時と場所によっても切り型が異なるとのこと。
現在、庖丁式は、日本各地の神社での奉納を初めとし、祝事や法要事などの行事・儀式の際に執り行われている。庖丁式を執り行う庖丁家、庖丁師は、多くの流派に分かれている。その儀式の内容は流派内の一部の人間で受け継がれる秘伝・秘事として取り扱われ、その内容を外部の人間が容易に知ることはできないとも言われている。
日本の食の歴史の深さと素晴らしさに目覚めさせられた一日であった。